お蕎麦屋さんなどの飲食店でたまに目にするたぬきの置物を皆さんはご存じでしょうか?
少し首を傾げていて真ん丸なお目目でこちらを見ていて、とても可愛くて愛らしいですよね。
色使いや質感が和を感じられる作りになっており、飲食店のみならず古風な建物にはもってこいの陶芸品かと思います。
そんな可愛くて愛らしいたぬきの置物に対して、なんと恐怖感を覚える人がいるのです。
筆者自身の怖いと思ってしまう理由もふまえて、今回はたぬきの置物について熱く語りたいと思います。
信楽焼(しがらきやき)とは?
まず信楽焼=たぬきの置物だけではないので、信楽焼の素晴らしや、魅力について簡単に説明します。
信楽焼の由来、ありがたみ
信楽焼が初めて誕生したのは何と今から1000年も遡り、天平時代であるといわれています。
宮づくりのための瓦から始まり、安土桃山時代には茶道具の茶器も信楽焼が使われていました。
また戦前までは各家庭の8割は信楽焼の火鉢を使用しており、はるか昔から人々に愛されていた陶芸品です。
現代においても食器や花瓶、そして今回ピックアップしている「たぬきの置物」などと幅広く商品を展開し進化し続けています。
信楽焼はどこでどうやって作られているのか
信楽焼は滋賀県甲賀市信楽町周辺で作られており、原材料も琵琶湖の湖底から得られた土を使用しています。
この湖底に堆積した土はおよそ400万年前から積もっているとされており耐火性もあるため、火にあてても品質を損なうことなく
信楽焼ならではの肌触りや温かい色味を出すことが可能なのです。
なぜたぬきなのか
それではなぜ他の動物ではなく、「たぬき」で置物が作られたのか、またたぬきの置物の縁起がいいといわれる理由を解説します。
たぬきの理由
なぜ信楽焼のたぬきの置物が、「うさぎ」や「くま」などではなく「たぬき」として造られたのか。
それは信楽町に所在する元祖たぬきの生みの親、窯元「狸庵」の初代「藤原銕造」氏によるものです。
藤原銕造氏はある月夜の晩、腹提を楽しんでいる狸を見かけました。
その狸の姿をどうにか形にしたいと考え等身大のたぬきの焼き物を作ったのが由来とされています。
他にも藤原銕造氏が夢の中で「狸を作れ」と告げられたこともきっかけだという話もあります。
たぬきの置物が縁起がいいといわれている理由
たまたま見かけたのが狸だった、夢で告げられたのが狸だったといった理由ではありますが、凄いのはただシンプルに狸が作られている訳ではないことです。
「たぬき」を「他」を「抜く」と変換し商売繁盛の意味が込められていたり、「八相縁起」と呼ばれる8つの縁起も込められていたりします。
こういった理由でたぬきの置物はとても縁起がいいといわれていて、飲食店に置いていることにも意味があるのです。
たぬきの置物の各部位に込められている意味を見ていきましょう。
- 大きな傘…普段から準備することで突然の災難から身を守る
- 大きな目…周囲を見渡せるほどの大きな目によって気配りし常に正しい判断が下せる
- 笑顔…常に笑顔で愛想よくいることで商売繁盛に繋がる
- 徳利…人徳を身につける
- 大きなお腹…冷静さと大胆さを持ち合わせる、満足いくまで食べられる
- 通い帳…信用が第一で、また通ってもらえるようにする
- 金袋…金運の象徴であり稼ぎを良くする
- 太いしっぽ…何事にもしっかりとした終わりを迎える、どっしり構える
信楽焼のたぬきを怖いと思う理由
ここまで紹介してきて、たぬきの置物がどれだけ愛されていて、どれだけ縁起のいいものか理解したあとにこんなことを書くのはとてもはばかられます。
ですが、それでもどうしても怖いと思ってしまう理由を述べさせてください。
エピソード:ふとした瞬間に恐怖に襲われた
夜遅く友人と夜道を歩いていた時のこと。
コンビニで買ったアイスを頬張りながら会話を楽しみ、ふと横を見るとそこに例のたぬきがいました。
建物と建物の間にどしっと置かれており、身長も150cmくらいの立派なたぬきでした。
街灯の光もあまり当たっていない場所に置かれていて、何となく怖い雰囲気を漂わせていたのです。
しかし当時は別にたぬきの置物に対して恐怖心など持ち合わせていなく、それは友人も同じでした。
なのにその時ばかりはどうしてか、自然と会話も歩みも止まり、まるで吸い込まれそうなほどその置物を友人と見つめていたのです。
きっと5秒ほど立ち止まっていたはずなのですが、体感時間は何分も見つめていたように感じます。
急に足の下から振動するような震えが起こり、ぶわっと冷や汗をかいて友人と共に叫びながら全力疾走しました。
しばらく走ってから友人と「今の何だったんだろうね!?」と話し、その日から友人も同じく恐怖心を持つようになってしまったのです。
筆者が思う恐怖の理由
上記エピソードと筆者の個性による勝手な恐怖なので、本当にたぬきさんは何も悪くないです。
ではなぜこんなにも恐怖心を抱いてしまうのか、勝手ながら推測してみました。
理由1:見た目
人間に近しい身長と二足で起立体勢、なのに姿かたちはたぬきという矛盾から生まれる違和感?から怖いと感じてしまうのかもしれません。
今にも動き出しそうなほど精工に造られており、それでいてリアルなたぬきではなく愛らしく加工されている信楽焼のたぬき。
本当に芸術品ですし素晴らしいと思うのですが、この絶妙なこだわりや信楽焼の特徴ともいえる「温かみ」が合わさって「生」や「ぬくもり」を感じさせるのでしょうか。
少し傾げた頭と大きく見開いた目を暗い場所で見たら、たぬきじゃなくても怖いよね
理由2:他の恐怖症
本当にこのようなブログを書いて信楽焼への風評被害もいいところで申し訳ないのですが、実は筆者には別の恐怖症があります。
なのでたぬきさんは本当に全く問題ございませんと何度でも言わせていただきたい。
筆者は「巨像恐怖症」、「水中人工物恐怖症」と造り物に対しての恐怖症を持っています。
大きな仏像などの巨像、また海底に沈んだ沈没船や人々の生活に馴染みのあるもの(お財布、携帯など)に恐怖をおぼえます。
つまり暗いところで人工造形物(しかも割と大きめの)を見てしまうという最悪のコンディションが揃ってしまったため恐怖を感じた可能性が絶大です。
恐怖症ってかなり面倒くさいね!!
【まとめ】信楽焼のたぬきは怖くない!とてもいい子
散々怖いと書いてしまいましたが、結局筆者のたまたま持ち合わせていた恐怖症が重なってしまったため勝手に怖いと思ってしまうのが理由でした。
信楽焼のたぬきの置物は、まず信楽焼という古くから人々に愛され続けている立派な陶芸品ですし、
たくさんの縁起のある素晴らしい置物です。
置くだけで縁起がいいのはもちろん「和」や「あたたかみ」を感じられ日本の良さ、陶芸品の良さを同時に感じられるでしょう。
しかし中には筆者のように怖いと感じてしまう方もいます。
それは何故か?もしかしたら別の恐怖症を持っているからかもしれません。
ですが一度、信楽焼の織り成す技に魅了され、たぬきさんの存在する意味を知ればなぜだか憎めない、いや、愛らしい存在に変わるのではないでしょうか。
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